★ 原付スクーターをEVに改造してみました ★

エンジン から モーター
エンジンからCQモーターへ


 中古の原付を買って、エンジンやミッションを取り外し、モーターに置き換えて電気で走るようにしたのですが、単純にそれぞれの部品を買って組み立てるだけじゃ面白くないので、モーターを作ることから始めました。
 ガソリンエンジンからモーターに取り替えて、モーターの原理やコントロール方法をはじめ、スクーターへ搭載ための諸問題を解決しながら作ることで、新しい知識や経験を得る事を目的としました。下記以外にも沢山のノウハウなどを実体験として得られて満足することができました。

 改造にあたって下記の書籍を参考にしましたが、本に書かれて無い諸問題も多くありましたので、自分自身の防備録と、たまに問い合わせを頂く皆様へのヒントになればと思い、以下にその様子などを書いておきます。

◯ 参考図書 : MOTORエレクトロニクス誌 No1(2015年9月1日発行)からNo.8(2017年10月1日発行)(CQ出版) http://shop.cqpub.co.jp/
(MOTORエレクトロニクス誌が見出しに無いので、サイト内検索窓で検索して下さい。)
 作ろうと思ったきっかけは、2014年に「モーター&インバーターの原理と組み立て」というCQ出版のセミナーに参加したのが始まりで、セミナーに参加してから今回の改造までは組み立てたモーターを分解したり再組み立てをしながら実験をくり返していましたので実装する事にしました。
 この実験で使っていたモーターと、同誌No.7(2017年6月1日発行)とNo.8に掲載の『原付バイク「チョイノリ」のEV化』の記事を参考にしての改造です。


◯ スクーター : オリジナルはススギのチョイノリ。 
 このスクーターはもう製造されていませんが、同誌で参考例として取り上げられていたのと、元々安価に売ることを目的に簡素に作られていて、後輪のサスペンションが無く、モーターの位置決めが容易であるなど、改造初心者にうってつけなので選びました。

 チョイノリには、エンジン始動方法にキックスタート式やセルモーター式などいくつかの種類が発売されていました。キックスタート式には、昔のガソリンエンジン式農機具のようにバッテリーが無くても動く方式のがあって、その場合はマグネトで発電された交流をそのまま使った回路になっています。部品や配線回路が直流用と異なったりするなどの違いがありますので、改造で元の配線や電装部品を流用される場合は、12Vバッテリーの付いたセルモーター式の方が配線や、元の警音器、方向指示器ユニットなどを使えて改造が容易かと思われます。
 スクーターの配線図はインターネットで探すといくつか見つかりますので、改造に取りかかる前に、実車と配線図を見比べて確認されるようお勧めします。配線が簡単そうだからと元の配線や電装部品を流用しようと甘く考えて作業すると失敗します。

 下の写真は、今回の改造内容に合わせて市役所で登録した完成写真です。 後輪の上にある青い箱(プラスチックコンテナ)にはバッテリー(48V仕様)、バッテリー前方の白い箱(電材屋さんで売ってるスイッチやコンセント用のプラボックス)にメインスイッチを兼ねたブレーカー、座席の下にモーターのコントローラー、元々のバッテリーが入っていた黒いケースに12V機器用電圧変換器などを入れています。

CQモーター原付

◯ モーター : (株)ミツバの学習教材 ブラシレスモーター製作キット(CQ出版からCQブラシレス・モーター(CQモーター)として市販)を使用。 このモーターについて詳しくはMOTORエレクトロニクス誌(CQ出版)のNo.1(2015年9月1日発行)等に書かれています。モーター出力などの測り方なども上記書籍に書かれています。

参考:今回使用したモーターについては、「株式会社ミツバSCR+プロジェクトのホームページ」 内の「製品情報」にも書かれています。 https://www.mitsuba.co.jp/scr

↓モーターコイルを巻いています。
 モーター作りの体験を兼ねて、コイルを巻いてはテストし、解いては人をバトンタッチして巻くなど、社員皆でそれぞれコイル間の繋ぎ方や巻き数を変えたのを作ってみたりしました。自分で巻いたモーターが回ったら、ホッとして皆ニコニコしだします。コイルの巻き方の違いで「モーターの性格」が代わるのを体感する事ができました。コイルを巻くのは結構大変ですが、書籍で学習したのと異なり、実体験として違いを感じられたのは良かったです。 

CQモーターコイル巻

↓モーターとして組み立てる直前の構成品
 写真のコイルは、今回の原付に取り付けたモーターと各コイルの巻き数や繋ぎ方などが異なります。巻き替えのためのマグネットワイヤーは、ポリエステルエナメルワイヤー(PEW)をボビンに1kg巻きのを、改造終了後の2017年11月に秋葉原の電線屋さんで追加購入したので、あと3回ほど巻き直して実験できそうです。 (電材屋さんで電線カタログを貰いましたが、それによるともう少し耐熱性の良いAIWってのも有るようです。)

CQモーターの構成品

 

↓モーター回転実験中。調子よく回っています(^^)
 実験用の電源やオシロスコープ、サーキットテスター、回転計などは以前から有るのを使っています。 オシロスコープが3相モーター回路を見るのに2chしか無いのが残念だったりします(^^; この後、中華RIGOL社のDS1054Zっていう、安価でネットでも評価が悪くなさそうな4chオシロスコープを買っちゃいました。

CQモーターとコントローラー

↓スクーターを裏返して撮影したモーター取付のようすです。
 写真でモーター右下に写っているのは電子スロットルで、中古のヒューエルインジェクション原付の部品を流用しています。

CQモーター取付状態

◯ コントローラー : Kelly KEB Brushless Motor Controllerの商品から選択。

Kellyコントローラーと付属品

参考:コントローラーは Kelly社のホームページで直接買えます。
  https://kellyev.com/

 実験段階で使っていたコントローラーは、モーターとコントローラーの基礎学習のためにセミナーに参加して作成した物(上の実験中写真に写っている基板)で、それにモーターコイルの巻き方などを替えたのを繋ぎ替えながらモーター出力の測定などをしながら実験していました。
 しかし、この基板のコントローラーでも走れない事はないのですが、実使用には出力スイッチ段のFETを電流容量の大きなのに変えたり、剥き出しの電子基板をスクーターへ実装したりするに無理があるのでケリー社のコントローラーを使いました。コントローラー本体は座席の下(ガソリンタンクの有った所)に取り付けています。
  コントローラーについて、このホームページを見られた方から問い合わせがありました。買ったのは2017年9月で、型式はKEB48201Xです。その当時の価格は日本円換算で2万円ちょっと。商品が手元に届いたのは上記ケリー社のホームページから注文して3日目くらいでした。

◯ 電源 : 原付用鉛バッテリーを4個直列の48V仕様です。リチウム電池を使う事も考えましたが、最初は使い慣れている鉛バッテリーにしました。これは価格が安く、充電が容易なだけでなく、転倒による破損や過充電・過放電などによる万一時の安全性を考慮しました。予算の都合で「怪しい」安っすいバッテリーを買ったので、正規品のカタログ値より優しく?使って、バッテリーが膨らんだり、破裂して硫酸が飛びちる事のないようにしています。また、密閉型バッテリーで充電電流を少ししか流し込めないので、回生制御はしない設定にしています。

48ボルト仕様のバッテリー

◯ その他 : メインスイッチを兼ねたサーキットブレーカー(BlueSeaSystem製)やバッテリー脱着を容易にするために使ったコネクター(AndersonPower製)などは、DC48V 100Aに対応した物を選択(これらの部品はクルーザーなど船舶に使われているようですが、結構高価です)。 また、モーターへの動力用配線は振動で折れにくく、柔軟性と耐熱性のあるシリコーンゴム被覆裸軟銅線を使うなどしています(ただしこの被覆はシャシー端部や尖った部分で擦られると破れやすいようなので、振動による擦れなどには線材の引き回し方に注意する事が必要です)

◯ ナンバーが付いたので、いよいよ構内から出て前の道路で走ってみました。
下の写真をクリックしたら、動画が再生されます。(MPEG4.H264形式のビデオで、WindowsパソコンやAndroid携帯、iPhoneで再生確認しています。動画を見られないとの問い合わせがありましたので動画形式を幾度か変換しています。この変換時に音量設定ミスをしたようで音が大きくなってしまいました。実際はこのような大きなモーター音はしません。)

試運転動画

 今回使用の鉛バッテリーでもオリジナルの「チョイノリ」より発進加速は良く、エンジン音がないので走行音も静かです。原付の制限速度を超過するスピードは簡単にでます。しかも、エンジン振動が無いので乗り心地(座り心地)も良いです。

 とりあえず走る事ができたので、今後の展開として剥き出し状態のモーターなどを簡易な防水・防塵対策を行なったり、コントローラーの設定変更を試すなど、いろいろ試してみる予定です。

 改造をしてみてモーターの発熱やバッテリー容量、充電時間の問題などが出てきて、自動車メーカー等のEV車開発の大変さの一片も感じられました。 たとえば問題点として、下の写真のように走行直後のモーターをサーモカメラで見ると、熱を持っているのが分かります。走行中に鉄粉を拾い集めないように防水・防塵対策をするにしても、信号などで停車して走行風が無くなった時にモーターへ送風するような放熱対策が必要なようです。(写真で被写体の輪郭と温度による色映像が多少上下にズレているのは、撮影したサーモカメラの近接撮影でのレンズ視差調整を忘れていた結果です。)

モーターの熱

 

 モーターやインバーターの勉強のためのセミナーに参加したり、普段なら見ることの無い電気資材屋さんの電線カタログや、チエン屋さんのチェーンやスプロケットのカタログ、ネットでコントローラーやブレーカー等の電材を探したり、スクーターのフレームにモーターを取り付けるための台を、厚紙で試作して位置合わせを行った後、正式にステンレス板で作って貰うために鉄工所へ発注するために製図ソフトの勉強をしたり・・・、結果として広範囲の勉強を出来ました。
 下の図面は縮小していますので分かりにくいですが、この図面を書いてから鉄工所のオヤジさんに折り曲げ位置の指定方法が違うとか、ボルト穴径とボルトの直径との関係だとか色々と教えて貰い、オマケにほぼ材料代だけで作って頂きました。しかも完成品はレーザー加工なので切断面もきれいでバリも無く完璧です。板だけを買って手作業で加工したらとても同等のを作れません。

 下の図の上2枚はモーター取付台、一番下のはバッテリー置き台です。

motorchassis2
motorchassis1
batterychassis

 このスクーターを見られた一般の方からは「速く走るか」、「どれ位の距離を走られるか」なんてばかり質問されます。最高速や走行距離にチャレンジするのなら、出来合いの部品を組んで作った方が簡単そうです。皆さんがこのような質問をされるのは、EVは充電が面倒くさい、走行距離が短い等と思われているからだと思います。このあたりへのチャレンジはこのホームページを読まれたりして新たなアプローチをされる皆さんやメーカーさんに頑張って貰うことにします(^^)

 私自身が今回の改造で思った事は、エンジンやミッションの手作りは出来ないし、作れたとしても元のスクーターのように歯車やベアリング・ボルト・ナットなどが沢山詰まった重い「エンジンやミッション」になります。ところが上記のように、EV車なら「バッテリーやコントローラー、モーター」だけの簡素な作りで走る事が出来、くかもコントローラーの設定を変えることによって走り方なども変えることができます。
 もちろん、改造に参加した社員も電気自動車やハイブリット車などのことを良く知るために、本で学んだ知識としてだけではなく、実体験として理解を深められたように思われて良い経験になりました。

 しかし事業として電動車の製造(開発)をするには、車体製作の基本技術と電気技術の連携が必要である事の重要さを感じ、長年にわたる車体製作の蓄積が無い家電メーカーが、一から社内製作で電動自動車は作れないし、自動車メーカーだけでも難しそうだという事です。

 最後に、色々と問い合わせをした事に丁寧に教えて頂いた、セミナーでお世話になった講師の株式会社ミツバ 内山英和様やCQ出版のCQエレクトロニクス・セミナ( http://seminar.cqpub.co.jp/ )ご担当者、スプロケット等の注文時に初歩的な質問ばかりして困らせた片山チエン(株)のご担当者の皆様などに感謝を申し上げます。
 時々この製作記を見られた方から問い合わせを頂きます。私の経験して分かる範囲で良ければ回答いたしますのでご遠慮なくメールなどで連絡してきてください。ただ、学生さんで卒業論文の手間を省く為の問い合わせと思われるものには答えかねますが、何らかのヒントになる程度は回答したいと思います。
2017年11月初版、2020年8月改

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