★ 原付スクーターをEVに改造してみました ★
エンジン から モーター へ
改造にあたって下記の書籍を参考にしましたが、本に書かれて無い諸問題も多くありましたので、自分自身の防備録と、たまに問い合わせを頂く皆様へのヒントになればと思い、以下にその様子などを書いておきます。 ◯ 参考図書 : MOTORエレクトロニクス誌 No1(2015年9月1日発行)からNo.8(2017年10月1日発行)(CQ出版) http://shop.cqpub.co.jp/
チョイノリには、エンジン始動方法にキックスタート式やセルモーター式などいくつかの種類が発売されていました。キックスタート式には、昔のガソリンエンジン式農機具のようにバッテリーが無くても動く方式のがあって、その場合はマグネトで発電された交流をそのまま使った回路になっています。部品や配線回路が直流用と異なったりするなどの違いがありますので、改造で元の配線や電装部品を流用される場合は、12Vバッテリーの付いたセルモーター式の方が配線や、元の警音器、方向指示器ユニットなどを使えて改造が容易かと思われます。 下の写真は、今回の改造内容に合わせて市役所で登録した完成写真です。 後輪の上にある青い箱(プラスチックコンテナ)にはバッテリー(48V仕様)、バッテリー前方の白い箱(電材屋さんで売ってるスイッチやコンセント用のプラボックス)にメインスイッチを兼ねたブレーカー、座席の下にモーターのコントローラー、元々のバッテリーが入っていた黒いケースに12V機器用電圧変換器などを入れています。
◯ モーター : (株)ミツバの学習教材 ブラシレスモーター製作キット(CQ出版からCQブラシレス・モーター(CQモーター)として市販)を使用。 このモーターについて詳しくはMOTORエレクトロニクス誌(CQ出版)のNo.1(2015年9月1日発行)等に書かれています。モーター出力などの測り方なども上記書籍に書かれています。 参考:今回使用したモーターについては、「株式会社ミツバSCR+プロジェクトのホームページ」 内の「製品情報」にも書かれています。 https://www.mitsuba.co.jp/scr ↓モーターコイルを巻いています。
↓モーターとして組み立てる直前の構成品
↓モーター回転実験中。調子よく回っています(^^)
↓スクーターを裏返して撮影したモーター取付のようすです。
◯ コントローラー : Kelly KEB Brushless Motor Controllerの商品から選択。 参考:コントローラーは Kelly社のホームページで直接買えます。 実験段階で使っていたコントローラーは、モーターとコントローラーの基礎学習のためにセミナーに参加して作成した物(上の実験中写真に写っている基板)で、それにモーターコイルの巻き方などを替えたのを繋ぎ替えながらモーター出力の測定などをしながら実験していました。
◯ 電源 : 原付用鉛バッテリーを4個直列の48V仕様です。リチウム電池を使う事も考えましたが、最初は使い慣れている鉛バッテリーにしました。これは価格が安く、充電が容易なだけでなく、転倒による破損や過充電・過放電などによる万一時の安全性を考慮しました。予算の都合で「怪しい」安っすいバッテリーを買ったので、正規品のカタログ値より優しく?使って、バッテリーが膨らんだり、破裂して硫酸が飛びちる事のないようにしています。また、密閉型バッテリーで充電電流を少ししか流し込めないので、回生制御はしない設定にしています。
◯ その他 : メインスイッチを兼ねたサーキットブレーカー(BlueSeaSystem製)やバッテリー脱着を容易にするために使ったコネクター(AndersonPower製)などは、DC48V 100Aに対応した物を選択(これらの部品はクルーザーなど船舶に使われているようですが、結構高価です)。 また、モーターへの動力用配線は振動で折れにくく、柔軟性と耐熱性のあるシリコーンゴム被覆裸軟銅線を使うなどしています(ただしこの被覆はシャシー端部や尖った部分で擦られると破れやすいようなので、振動による擦れなどには線材の引き回し方に注意する事が必要です)。 ◯ ナンバーが付いたので、いよいよ構内から出て前の道路で走ってみました。 今回使用の鉛バッテリーでもオリジナルの「チョイノリ」より発進加速は良く、エンジン音がないので走行音も静かです。原付の制限速度を超過するスピードは簡単にでます。しかも、エンジン振動が無いので乗り心地(座り心地)も良いです。 ◯ とりあえず走る事ができたので、今後の展開として剥き出し状態のモーターなどを簡易な防水・防塵対策を行なったり、コントローラーの設定変更を試すなど、いろいろ試してみる予定です。 改造をしてみてモーターの発熱やバッテリー容量、充電時間の問題などが出てきて、自動車メーカー等のEV車開発の大変さの一片も感じられました。 たとえば問題点として、下の写真のように走行直後のモーターをサーモカメラで見ると、熱を持っているのが分かります。走行中に鉄粉を拾い集めないように防水・防塵対策をするにしても、信号などで停車して走行風が無くなった時にモーターへ送風するような放熱対策が必要なようです。(写真で被写体の輪郭と温度による色映像が多少上下にズレているのは、撮影したサーモカメラの近接撮影でのレンズ視差調整を忘れていた結果です。)
モーターやインバーターの勉強のためのセミナーに参加したり、普段なら見ることの無い電気資材屋さんの電線カタログや、チエン屋さんのチェーンやスプロケットのカタログ、ネットでコントローラーやブレーカー等の電材を探したり、スクーターのフレームにモーターを取り付けるための台を、厚紙で試作して位置合わせを行った後、正式にステンレス板で作って貰うために鉄工所へ発注するために製図ソフトの勉強をしたり・・・、結果として広範囲の勉強を出来ました。
このスクーターを見られた一般の方からは「速く走るか」、「どれ位の距離を走られるか」なんてばかり質問されます。最高速や走行距離にチャレンジするのなら、出来合いの部品を組んで作った方が簡単そうです。皆さんがこのような質問をされるのは、EVは充電が面倒くさい、走行距離が短い等と思われているからだと思います。このあたりへのチャレンジはこのホームページを読まれたりして新たなアプローチをされる皆さんやメーカーさんに頑張って貰うことにします(^^) 私自身が今回の改造で思った事は、エンジンやミッションの手作りは出来ないし、作れたとしても元のスクーターのように歯車やベアリング・ボルト・ナットなどが沢山詰まった重い「エンジンやミッション」になります。ところが上記のように、EV車なら「バッテリーやコントローラー、モーター」だけの簡素な作りで走る事が出来、くかもコントローラーの設定を変えることによって走り方なども変えることができます。 最後に、色々と問い合わせをした事に丁寧に教えて頂いた、セミナーでお世話になった講師の株式会社ミツバ 内山英和様やCQ出版のCQエレクトロニクス・セミナ( http://seminar.cqpub.co.jp/ )ご担当者、スプロケット等の注文時に初歩的な質問ばかりして困らせた片山チエン(株)のご担当者の皆様などに感謝を申し上げます。 |